2025.8.15 Ruizaパーソナルインタビュー vol.1

 2024年3月7日&8日の東京・豊洲PIT公演を持って活動を休止したD。その後、Ruizaはソロ・アーティストとして、新たな歩みをスタートさせたのは周知の通りだろう。もちろん、以前もインストゥルメンタルを中心に不定期ながらも音源のリリースやライヴも行ってきた。ただ、長らくすべてを捧げてきたバンドと並行するのではなく、個人としての活動が主となった現在は、少なくとも以前とはまったく異なる環境にあると言っていい。

 今年1月にリリースされたミニ・アルバム『Alive』が、ヴォーカル入りのマテリアルで構成されていたのは一つの注目点である。加えてライヴに関しても、同作のレコーディングにも参加していたSeth(vo/Moi dix Mois)、Tsunehito(b/D)、美景(ds/元VII-Sense、chariots)を伴って行われている。彼はミュージシャンとしての次なる展開をどう見据えていたのか。昨今の足跡を振り返りながら、現在のRuizaの表現にある根幹を語ってもらった。

(取材・文/土屋京輔)

──まずは時間を遡って話を訊かせてください。2023年5月にDの活動休止が発表になって以降、いろいろと周辺の情報を探っていく中で、Ruizaさんに関しては、次の動きがまったく見えてこなかったんですね。以前のようなインストゥルメンタル中心のライヴを行うといった様子もありませんでした。それが不思議だったんです。

Ruiza:それは本当に何も決めてなかったからなんですよ。ただ、活休を発表した後、唯一決めたことがあって。たまたま仲間と飲む日があったんですよ。ちょっとご飯でも食べに行こうって軽いノリでね。そこでこれも偶然ですけど、その日にライヴが入っていなかった池袋のレッドゾーンで飲むことになったんですよ。そのときに、今後はどうするのかって話になるじゃないですか。でも、そう訊かれても、何も決めてないとしか答えられなかったんですけど、「何かやったほうがいい」とその場にいたみんなが言ってくれて。もちろん何をするかもわからなかったけど、とりあえず(2024年の)7月に1日だけ会場を押さえてくれたんですよ。

──たまたまライヴハウスで会食することになり、期せずしてその場で話が進んだんですね。

Ruiza:そうなんですよ。ギター・インストをやりたいなと思えば、やればいいかなぐらいの気持ちで。3月にDのライヴが終わって、その時点でもしやりたくないと思ったとしたら、まだ4ヶ月あるから、一旦バラすこともできるじゃないですか。だから、当初は本当にそれぐらいの気持ちだったし、決めたのもそれだけだったんですよ。他からのお誘いも特になかったですし。

──お誘いがなかったというのは、きっと何か次のプランを考えているのだろうと思われていたからでしょうね。

Ruiza:もちろん、それもあると思います。それと壁を作ってたわけじゃないんだけど(笑)、Dはちょっと活動が独特じゃないですか。

──確かに作品のリリース・ツアー以外にも、様々な公演やイベントが精力的に行われてはいましたよね。それこそ他の活動に力を注ぐことは難しいと思われるぐらいに。

Ruiza:10年ぐらい前に活休したときは、葵くん(vo/彩冷える)にツアーのサポート・ギタリストとして声をかけてもらったことがあったんですよ。ただ、当時は7〜8ヶ月ぐらいの期間でしたけど、先にセッションとかのスケジュールをパンパンに入れてたから、手伝いをする隙間もなかったんですよね。だから、そのときは申し訳なかったんだけど、依頼を断らざるを得なくて……。単発でのゲスト参加はいろいろありますけど、いわゆるサポートでという話は、実はそれしかなかったんですよね。そういった経緯もあって、去年、ようやく168(葵のソロ・プロジェクト)のサポートをすることが出来ました。

──コンスタントに活動しているバンドのメンバーには、現実的にはなかなかサポートをお願いできないですからね。ただ、7月に一応の予定は立てつつも、自身のソロ活動については、まだ積極的にはなれていなかったのでしょう?

Ruiza:はい。その7月のライヴも、さっき言ったように、やるとしたらギター・インストだろうと思ってたから、新たに曲を作ったりもしてなかったですし……無期限活動休止をするって、僕の中ではめちゃくちゃ大きいことだったんですよ。自分の人生において……もちろん、20年もやり続けてきたものだからというのはあるけど、そういった単なる時間的な長さを遥かに超越していて。

──つまり、活動の中身ですよね。それだけ濃密な日々を過ごしていた。

Ruiza:そう。もちろん、嬉しいこともあれば、嫌なこと、悲しいこともいっぱいあったんですけど、そういうものを全部ひっくるめて、ストップするという事実がある。言い換えれば、それ相応の理由というか覚悟があるわけですよ。だからこそ、僕は「綺麗な状態でDを残したい」とずっと発言してたんです。一番いい状態で終わりたいって。そう考えたら、無期限活動休止が決まったとはいえ、僕は他のことを考えるなんてできなかった。すべての時間をDに注ぎたかったんですよ。その先を考える余裕はなかったですよね。

──いろんな向き合い方があると思いますが、Ruizaさんの場合は、とにかくDに集中したかったということなんですね。

Ruiza:そういうことになりますね。3月にDのライヴを終えた後、僕はダウトが主催した『バンギャルフェス』(2024年4月20日=川崎クラブチッタ)というイベントに出たんですよね。言ってしまえば、それに誘われたことで、自分の気持ちも動いたんですよ。

──時間的なことを考えれば、早い段階でオファーはあったと思うんですが……。

Ruiza:いや、実はDのライヴが終わってからなんですよ。幸樹(vo/ダウト)も「こんな時期に誘うべきじゃないというのはわかっているんですが」と声かけてきてくれてたんですよ。セッション・バンドでの出演ではあったんですが、その時点で面子もまだすべて決まっていない状況でしたからね。でも、声かけてくれることが嬉しいじゃないですか。とはいえ、当然、ぽっかりと心に穴が開いた感じになってたから、すぐには「いいよ!」という返事もできなくて……。そのうちにいろいろ考える毎日を過ごす中で、いろんなお誘いの話がポツポツと入ってくるようになったんですね。サポートの件もそうだし、ライヴだけではなくて、トークを一緒にやりませんかみたいな話もあったり。

 だから……というわけでもないかもしれなけど、何となく需要があるのかな、必要としてくれてる人がいるのは嬉しいなという気持ちが出てきてたんですね。そこで改めて幸樹からの依頼に関しても、もし僕が出演することになったら、喜んでくれるファンがいるだろうなと思えたんですよね。少なくとも悲しむ人はいないだろうし。だったら、やってみようかなって。でも、その一回だけで終わったら、がっかりさせちゃうじゃないですか。だから、待っているのではなく、自分が動かなきゃなと思ったんですよね。

──それから具体的に自分の活動を考えるようになったんですね。

Ruiza:はい。そこで今、一番必要なことは何だろうと考えたとき、やっぱり自分が何かしらの音楽を届けることだろうなと思ったんです。一時はもしかして音楽をやることはないかもしれないと考えたり思うぐらいの気持ちだったんですよ。でも、結局、僕はバンドが好きなんですよね。バンド・サウンドが好きで、バンドがやりたいなと思ってギターを始めてますから。ただ、バンドをやるとなると、活動休止をした後だから、いろんな意見が出るじゃないですか。だから、賛否両論が最も起こらないことをしたいなと思ったんです。

──賛否両論? 否定的な意見も出てくるものですか?

Ruiza:バンドをやるんだったら、Dを続けて欲しかったと考える人も少なくともいるんですよ。もちろん、その気持ちもすごくわかる。僕だって、すごく大切にしてきたことですから。だからこそ、なるべく嫌な思いをさせたくないし、自分を応援してくれてる人に何とか応えたいと思ったんですよね。すべてのファンに納得してもらうのは絶対に無理なことなんだけど、それはわかりきったうえで何ができるのか。せめて応援してくれるみんなとの居場所は作りたいなと、少しずつそれを形にしていこうと思ったんです。それにはどういう形がいいのかと考えたとき、バンドっぽいことをソロでやろうと思ったんですよ。僕がSethさんに声をかけたのも去年の4月に入ってからとかでしたね。『バンギャルフェス』への出演を決めた後だったから。

──比較的すぐにそう考えるようになっていたんですね。

Ruiza:そう。そこからは、スケジュールよりも何も、まずは自分がやりたいことをSethさんや周りの人たちに伝えながら、力を貸して欲しいですという話をして。ちょっとずつちょっとずつ、そこから作っていった感じなんですね。

──それがRuiza BANDと言われるものになったんですね。最初に声をかけたSethさんは、彼がAMADEUSで活動していた頃、一緒にツアーを廻った経験があったんですよね。

Ruiza:そう。だから、付き合いはめちゃくちゃ長いんですよ。Dをやってる間もMoi dix Moisと対バンしたこともありましたよね。主催イヴェントに出ていただいたり、『V-ROCK FESTIVAL』などでも一緒になったり。だから、会えば盛り上がったりしてたんですけど(笑)、『JVM』(2023年にD、Versailles、Moi dix Mois、摩天楼オペラが立ち上げたプロジェクト)が大きかったなと思いますね。あのツアーのときは、一緒にいる時間も長かったから、改めて直接いろいろとお話もして……とはいえ、音楽がどうとかそういう内容ではなく、人となりがわかるような会話ですよね。しかも、歌ってる姿をすぐそばで観てもいましたし。ずっと知り合いですけど、そこでグッと距離が縮まった感じがしたんですよね。

──そういった経緯があって、新しいRuiza BANDを始めるときに真っ先に声をかけたんですね。

Ruiza:そうですね。『JVM』のツアーは2023年の9〜10月だったから、わりと近い時期に歌声を聴いていて、すごく印象深かったのもありますよね。もちろん、その魅力は昔から感じてたんですけど、当時はSethさんは先輩すぎて、何か一緒にやりたいみたいな気持ちには一切ならなかったんですよ(笑)。僕からすると、雑誌に載ってるレベルの人たちでしたからね。

──確かに先輩にコラボレーションを持ちかけるというのは、年齢が若ければ若いほど、現実的には思えませんよね。

Ruiza:そう。お声がけをしようという発想にすらならない。まぁ、僕は普通にDで活動していたから、そういうタイミングもなかったんですけど、ソロとしてすぐに何かを始めたいと思ったとき、すぐにSethさんだなとパッと思いついたんですよ。

──シンガーとして、どういうところに惹かれるんでしょう?

Ruiza:まずは歌唱力。それこそAMADEUSの曲がとにかく大人に感じられたんですよね、まだ20歳ぐらいだった当時の僕たちからすると。音楽をちゃんとやっている。そこで感動する歌を歌っていたのがSethさんなんですよね。「歌とは、バンドとは、こういうことなんだな」みたいな感覚を覚えたのもその頃で。『JVM』のツアーのときはMoi dix Moisだったから、攻撃的な歌が多かったんですけど、ふとメロディックなパートが出てくると、やっぱり声がめっちゃ綺麗だったんですよ。「うわっ、凄い!」と素直に思ったんですよね。

──かつての記憶フラッシュバックする、慣れ親しんでいたSethさんの声だった。

Ruiza:はい。別に改めてかつての音源と聴き比べたりしたわけじゃないけど、当時も凄くて今も凄いんだったら、絶対に凄いに違いないと(笑)。まずはそこですよね。僕はこれまで自分がやりたいと思う曲しか作ってきてないんですけど、この歌声、声質は絶対に合うだろうなと直感的に思ったんですね。実際に今もSethさんの歌に合わせて曲を作ろうっていうことはしてないんですよ。歌いやすさということで、たとえば、トップノートがどれぐらいかといったテクニカルなことを確認しているぐらいなんです。

──巧いシンガーが数多くいる中で、なぜ彼らがよかったのかと言えば、自分の音楽との相性のよさというところに行き着きますね。

Ruiza:そうですね。核心になるんですけど、『Alive』に入っている「生々世々」って曲があるじゃないですか。あれは実はDの活動中に作ったものなんですよ。最後のアルバム『血界』(2023年)を作った頃ですね。それ以外はRuiza BANDというかソロをやろうと思ってから手掛けたんですけど、その中では「深層」を最初に作ったんですね。曲自体にも自信があったし、これは絶対にSethさんの声がハマるだろうと、めっちゃ手応えがあったんです。そこから、この先に自分が何をやっていきたいのか……世に出ていない過去の曲なんて、とんでもない量があるんですけど、それを改めていろいろ聴いてみたんですけど、一生このまま消えていくのかと思ったらちょっと悲しいですよね。その中で、Sethさんの歌に合いそうだし、これから始めるタイミングで、転生させるにはめちゃくちゃいいなと思ったのが「生々世々」になる曲だったんです。そこで引っ張り出してきて、今の自分が新たに活動を始めるとしたらという観点のアレンジに変えて。

 「深層」ができた時点で、やることだけは決めていた7月のライヴを、この新たに始めるソロとしてのものにしたいなと思ったんですよ。だから、そこから急にそのライヴに向けた準備を具体的に進めていくことになったんですね。

──当初は気が向いたらやれればいいかなぐらいに考えていたライヴだったにもかかわらず……。

Ruiza:そう、ちゃんとやろうと思って。とはいえ、時間的にもそんなに余裕はなかったですし、今の自分にできるキャパシティは変えようがない。そこで本気で何ができるかとなると、やっぱりギター・インストのライブなんですよ。ただ、みんなが喜ぶことをしたかったし、自分のこれからも見せたいなと思ったので、そのライヴを『生々世々〜Endless Circle〜』というタイトルにしたんですね。TsuneにはSethさんと新たな活動についての話をしてるんだけどサポートしてくれないかなとお願いしてみたら、喜んでやると言ってくれていたので、この日のライヴはインストはもちろんですけど、Ruiza BANDとしてもステージをやりたいという気にもなって。

 結果、その日は本編がギター・インストで、基本的に以前から僕のサポートをしてくれれた美景と二人でやったんですけど、Tsuneには2曲だけ、ゲストでベースを弾いてもらったんですね。そこで本編が終わって、アンコールで「今から新しい姿を見せるね」と、サプライズでSethさんにも登場してもらって、Ruiza BANDとして2曲やったんですよ、「深層」と「生々世々」を。そこで今まで話してきたような自分の気持ちを、ファンのみんなにもすべて伝えたんです。いろんな受け止め方をしたと思うんですけど……その日はDの活休の後、自分が開催するものとしては初めてのライヴだったので、終演後に撮影会をやったんですね。だから、その場でみんなの声を直接聞くことができたんですけど、「好きなことをやって欲しいです」という声が圧倒的に多かったんですよ。それがめちゃくちゃ嬉しくて。100%じゃないにせよ、そこまでの短い数ヶ月ですけど、自分の選択は正しかったんだなと思えたし、これからも同じ気持ちでやっていこうと改めて思ったんですね。そうなれば、たとえば単純に作品を作りたい気持ちにもなりますし。

──その先の構想も次々と浮かんでくるようになったわけですね。

Ruiza:そう。そのライヴをやったことで、めちゃくちゃ変わったというか。

──そのライヴで現在のRuiza BANDのメンバーが揃ったわけですが、美景さんとも付き合いは長いんですよね。

Ruiza:そうですね。僕のソロに関していうと、『awake』(2022年)を出したときには『GOD CHILD RECORDS』(DのASAGIが主宰するレーベル)からは独立して、自主でやっていたんです。ちょうどコロナ禍で、なるべく少人数でライヴをしなければならない状況でもあったので、1人でやっても構わなかったんですけど、やっぱりバンド感が欲しいなと思って、美景にドラムを叩いてもらうことにしたんですよ。もちろん、昔から人となりもわかってる間柄ですしね。だから、Ruiza BANDに参加してもらうのも自然な流れでしたね。

──ベースをTsunehitoさんにお願いするのは悩んだのではないですか? 先ほど新たなバンド活動を考えたとき、Dの存在がファンにとっても大きいといった趣旨の話がありましたよね。そこに葛藤もあったのではないのかと。

Ruiza:うーん、葛藤まではないんですけど、過去にTsuneにはインストのライヴで弾いてもらったことがあるし、そのときのいい感触があるから、頼むとしたらTsuneがいいなとは漠然と思ってたんですよ。活休後ですし……ちょっと言い方は難しいんですけど、Tsuneも気負わずに活躍できる場所があったら嬉しいだろうなという気持ちもありました。それに僕は単純にTsuneのベースが好きですしね。まだ4月とかの話ですから、そのときにTsuneがどういうことを考えて、どこまで予定が決まっていたのかはわからないですけど。

──その頃にはRuizaさんも気持ちの余裕が出てきてたんでしょうね。周囲の人たちのことも考えられるようになっていた。

Ruiza:確かに。でも、自分のことは後回しでしたね。そもそも、新たに活動を始めようと思ったのも、応援してくれている人を何とかしたいという気持ちからでしたし。でも、ご存じの通り、Tsuneはめっちゃいいベースを弾くじゃないですか(笑)。「あのベースがここに入ったら、めちゃいいだろうな」とは、やっぱ曲を作っていても思うんですよ。

──『Alive』を聴いていても、笑ってしまうほど、Tsunehito印の印象的なベースが聞こえてきますしね(笑)。

Ruiza:そうそう(笑)。『Alive』では華凛ちゃん(b/元NoGoD)にも弾いてもらった曲がありますけど、以前のソロに参加してもらったとき、めっちゃいいベースだったんですよね。ベースに関しては、インストの「Alma」では舜さん(g/覇叉羅)が弾いているんですね。舜さんは今回のレコーディングでエンジニアをしてくれているんですけど、シンセのアイディアがあるから、試してみてもいいかと提案されたんですよ。嫌だったら使わなくていいからと。そこでお願いすることにしたんですけど、僕がMIDIで作ったデータを送ったら、めちゃくちゃいいシンセが返ってきて。そのときに舜さんが僕の曲をすごく掘り下げてくれることに気づいたんですよ。

 『alma』のベースに関しては、実は最初は自分で弾こうかなと思ってたんですね。ただ、レコーディングでベースを弾いたことはほとんどないし、実際にミックスする段階で問題が見つかったりする可能性もあるので、舜さんにベースも弾けるかどうか聞いてみたんですよ。そしたら、それなりのものはできると思うよとのことだったので、この曲だけお願いすることにしたんです。僕がギターを全部先に録って渡すんですけど、やっぱり舜さんもギタリストだから、ちょうどいい塩梅のベースを弾いてくれて。結果めちゃくちゃよかったなと。

──本職のベーシストではないゆえに、プレイヤーとしての個性を出すというより、あるべきところにあるベースを弾いている印象ですよね。特にこの曲はベースが何か主張する必要がないですし。

Ruiza:そうなんですよ。曲と世界観をわかってるなと思ったんですよ。おっしゃる通りで、ベースが主張すべきではないところは弾かないですし、ピアノの音を主人公にするべき場所はちゃんとそう踏まえてくれてますし、曲が持つ温度感や世界観の構築を一緒になって考えてくれてるんですよね。実はSethさんともめっちゃ仲がいいんですよ。Sethさんのこれまでのレコーディングもほとんど舜さんが録ってるらしくて。そこで僕も興味を持ったんですね。去年の9月に僕が覇叉羅のイベントに出たときに久しぶりにお会いしたんですけど、後日、3人で飲みに行ったんですよ。そこでめっちゃ盛り上がって。当初はヴォーカルのレコーディングをお願いするつもりだったんですけど、波長もすごく合う感じだったので、MIXまですべてお願いすることにして(笑)。舜さんもやりたいと言ってくれてましたし……そういう気持ちはめっちゃ大事じゃないですか。これは一丸となってやれるなと思いましたね。

──最初に作ったという「深層」は、これからソロとして新たに活動する思いで書き下したわけですよね。曲想についてはどんなイメージがあったんですか?

Ruiza:いい意味でハッピーになれる曲を作りたかったんですよ。ライヴで「この曲が聴けてよかった!」って思うときがあるじゃないですか。あれですね。とにかく笑顔になれる、聴いて元気になれる、代表曲になり得る曲を絶対に作ろうと。でも、特に悩みもせず、一瞬でできましたね。

──そもそも自分ですべて作詞まで手掛けることも想定していたんですか?

Ruiza:もちろんです。

──Ruizaさんが初めて作詞をしたのは、いつ頃まで遡ります?

Ruiza:本当に初めての作詞はSyndromeのときですね。でも、経験を積んだうえで、自分のやりたいことがある程度わかってからという話になると、『ONE』(2017年)のときになりますね。基本インスト作品なんですけど、これまで数曲だけ自分が歌っているんです。曲と歌詞の世界観をリンクさせる、そういう意味合いで作詞をしたのはそのときなんですけど、当時と今とでは感覚がまるで違うんですよ。昔は言葉も全然出てこなかったんですよね。今はあまりそういうこともなくて、伝えたいものが曲を作っている段階からあったんですね。

──「深層」というタイトルは最終的に歌詞を書き上げたうえでつけたものですか?

Ruiza:そうです。

──歌詞を目にしても、ライヴの光景を思い浮かべていた様子が窺い知れますね。このタイミングだからこそ書けたものでしょうね。

Ruiza:絶対にそうですね。サビでワーッと手が上がって、客席ではみんなが笑顔っていうような、本当にライヴでしか得られない幸せなイメージですよね。サビに至るまでの熱量とサビに来たときの開放感……そんなライヴの醍醐味もありますよね。

──サビでは<願う 琉璃の世界の果てへ 連れて行ってよ>と歌われていますが、曲の締め括りでは<連れて行くよ>という言葉になっています。つまり、受動的に述べていた願望が、能動的なメッセージとして発されるようになる。

Ruiza:これは自分自身を歌ってる曲でもあるんですね。新しく始まるものとして作ったので、これまでの自分もちゃんと出したいなと思ったし、悩んでいる姿とかもあまり隠したくなかったんですよ。むしろ、弱いところも見せたいなと思って。でも、曲そのものが醸し出す世界観もありますけど、最後は自分が引っ張っていきたい。そんな流れにしてますね。

──当初は手を差し伸べて欲しいぐらいの気持ちで、自分を愛してくれる人たちを頼るような姿も見えますよね。ところが、あるとき発奮して自ら歩み始める。今回のソロ活動を始めるに至ったRuizaさんの意思とも同調する。

Ruiza:はい。それから自分の中でのストーリーがあって。このタイミングだから、すごく思ったのかもしれないんですけど、都市伝説がめっちゃ好きなんですよ。

──都市伝説ですか!?

Ruiza:そう。抽象的なんですけど、世の中の真実とは何なのか、とかめっちゃ考えたんですよ。たとえば、運命というものがあるのかとか、実は箱庭の中で踊らされているだけだったとか、いろんな話がありますけど、仮にもしそうだとしたら、ぶっ壊したいなって、やっぱり思ったんですよね。生まれてくる気持ちは、誰かに仕組まれたようなものではなく、自分のものでありたいなって。だから、<君>というのも、前半は神とされるものに向けて言っていたりもするんですよ。すべて隠されているのか、わからないように仕組まれているのか。そんなところを問うている曲なんですね。でも、<君>という対象も曲の途中で変わるんですよ。

──なるほど。「深層」は同音異義語の「真相」の意味合いもあるわけですね。

Ruiza:そう。だから、めっちゃタイトルは考えましたよ。曲もハードなところから、美しいところ、光が射すような思いを感じられる展開を作りたいなと思いましたし、単純にこの1曲を聞いて、Ruizaだねと思ってもらえるものにもしたかったし。僕のこれまでの音楽活動を追ってきた人だったら、きっと喜んでもらえるものになってるんじゃないかな。

──ただ、ギター・ソロは今までにない感じがありますよね。言うなれば、ブライアン・メイン(QUEEN)を想起させる音色で、ちょうど場面が展開していくところでもあって。

Ruiza:ここはギター・ソロというふうには思ってなくて、単純にブリッジぐらいな位置づけなんですね。

──この曲の間奏としていかにあるべきかと。

Ruiza:そうですね。YouTubeでMVを公開したときに「もっとギター・ソロを弾け」ってコメントはやっぱりありましたね。でも、僕はギター・ソロとして作ってなかったので、それは違うんだよなぁと思ってたんだけど(笑)。

──でも、それはそれで嬉しいですよね。もっとRuizaさんのギターを聴きたいという気持ちの表れですから。

Ruiza:そうそう。でも、この曲に関しては、これでよかったなと思うんですよね。そもそもあそこはピアノが主人公ぐらいで考えてたんですね。

──でも、あのギターは重要ですよね。

Ruiza:多分、音数が多かったら、あの切ない感じは出ないですよね。この曲のサビってオブリが入っているじゃないですか。最後のサビでハイ・ポジションで弾くところは、最近のライヴでは、アドリブになってきてるんですよ。自分の感覚がちょっとずつ変わってきていて、そのときのテンション、熱を音にしたい気持ちになってるんですね。

──それも充実したライヴが行えているからこそですよね。さて、この曲に限らずですが、歌詞における色の言葉の使い方が興味深いんですよね。「深層」にしても、<紅の棘>や<瑠璃の世界>とか。<紅の棘>も何かの象徴のはずで、作り手としては具体的に見えているものがあると思うんです。

Ruiza:植物であることは間違いないんですけど、想像上のものなので何とは言えないんですけど、一番ヴィジュアルのイメージが近いのはバラの茨ですね。アニメなどで捕らえられるシーンで出てくるものがあるじゃないですか。

──あぁ。バラの刺のようなものがついた生命体ですね。

Ruiza:そうそう。あれなんですよ。でも、あれが一体何かはわからない。ただ、ああいうとき、色も大体が赤黒なんですよ。なので、はっきりと紅と言ったら、血がイメージできるな思ったんですね。瑠璃というのは地球をイメージできるものとして。色は表現として面白いなと思うんですよ。

──特に日本語には色の表現がたくさんありますよね。それによって印象がガラリと変わることがあります。具体的になることも、逆にそれによってぼやかされることもある。それは「生々世々」でも言えますが、冒頭から<黎黒>なる言葉が出てきますね。

Ruiza:そうですね。調べれば調べるほど、色の表現の奥深さを感じるんですよ。その中で、今この瞬間に最も近いと思われる言葉を探す。ただ、僕がいい歌詞を書いてるとか、そんなふうには自分では思わないですけど、なるべくイメージしやすい言葉を使いたいとは思っているんですね。「生々世々」では<黎黒>とか<朱殷>は難しく感じる言葉ですけど、それは必要なものだからこそ使うわけで、全体像として「何が言いたいんだろう?」となってしまうのは避けたいんです。そこは気をつけているところですね。

──「生々世々」は、Dの後期にアイディアがあったと伺いましたが、曲名がついたのは7月のライヴの頃なんですよね?

Ruiza:そう。曲を掘り返してアレンジし直して作っていく中で、先に決めていたライヴの意味合いとこの曲が生まれ変わるというところが、<生々世々>だなと思ったんですよ。実際に歌詞も、こういうことがずっと続いていくんだろうなという内容になっているんですよね。それがたまたまだったのか、必然だったのかはわからないですけど。

──ただ、曲に導かれるように歌詞を書いたのは間違いないんでしょうね。

Ruiza:そうですね。見える景色とかも、ずっとこういうものなんだろうなと思いながら書いてたら、<生々世々>だなという感じになりましたね。

──ここから動き出すのだという心境も自ずから映し出されている。

Ruiza:その通りです。だから、<カスミ>という言葉が出てくるんですけど……。

──ええ。そこは伺いたかったところです。

Ruiza:これは単純に、くぐもったところ、はっきり見えないという意味のカスミですね。霧のような霞がかったところから、早く明るい、はっきり見えるところ行きたい気持ちがまず一つですね。それから<生々世々>をタイトルにしてライヴをやることになって、撮影をしたんですよ。そのときのコンセプトとして、これからの自分と新しいものを出したいという気持ちを象徴するために、儚さを表現したいなと思ったんですよね。Dは続いているとはいえ、一旦の終わりを迎えることになりましたし。そこでカスミソウを使って撮影したんです。なので、その撮影のイメージを歌詞に入れているんですね。

 ただ、後から思うんですけど、『awake』を作ったときも、僕は植物に囲まれて撮影してるんですよ。そのときも実はカスミソウがあったりしたんですね。よくよく楽曲のイメージとかを膨らませていったら、繋がってくるように思えるんですよ。突拍子もないことをしているわけじゃなくて、自分でも気付いていなかったような土台にそれがあったんだなって。

──<黎黒>に染まり、<朱殷>に染まる世界を<蒼く>染めようと。この流れにも意思が見えてきますね。

Ruiza:だんだん明るくなっていってるんですよね。最初は真っ暗なんです。死んでるんですよ、この時点で。

──それが<朱殷>に染まるというのは、言葉だけではポジティヴにもネガティヴにも捉えられますよね。

Ruiza:いいことも悪いこともある感じに捉えているんですね。人生においては何事も一方ではないですから。たとえば、何かをする前の緊張って、上手くいくことも失敗することも考えて生じるものだったりするじゃないですか。その感じですね。そこから蒼く染めるのは、歌詞の通りですけど、だんだん明けてくる様子を表現したいなと。夜が明けるというのは、つまり活動が始まるということに直結してますね。

──アルバムのタイトルが『Alive』ですし、自分は生きているんだという言明でもあると思います。その意味では「生々世々」は相応しいオープニング曲になりましたね。ピアノのイントロからアコギが奏でられていく「Swallowed」は、いわゆるバラードと言われるスタイルですが、これはどんなイメージだったんですか?

Ruiza:この曲を作る前に、すでに最近のSethさんの歌を知っていたから、僕がどんな曲を作っても歌いこなせることもわかっていたんです。とはいえ、Sethさんの歌をイメージして作ったわけではなく、純粋にメロディアスで美しいバラードを作りたいなという気持ちだったんです。ただ、なぜかはわからないんですけど、3拍子の曲をやりたかったんですよね。実は今回の『Alive』は、偶然なんですけど、曲を作った順番通りに収録しているんですよね。「Alma」だけはちょっと別なんですけど。「深層」というハードな曲を作った後だったので、その落差もあったのかもしれないですね。多分、対極に来るようなものが欲しいなと思ったと思いますし。

 歌詞にも繋がるんですけど、さっき言った都市伝説的な世界観が「深層」ですごくしっくりきてたので、地球のこれまでの歴史においても、きっといろんなことあったんだろうなと想像してたんですよ。たとえば、科学的には証明されていないとしても、海に沈んだ世界があってもおかしくないだろうなと思って……。

──アトランティス大陸ですか。

Ruiza:そういうイメージは、曲を作ってる段階からちょっと頭の中にあったんですよ。だから、飲み込まれるという意味のタイトルの通りなんですけど、飲み込まれて消えていくという曲を作ろうと思ったんですね。自分でも最初はわかってなかったんですけど、このアルバムがちょっとコンセプト的になっていることにこの辺で気づくんですよ。僕はそうだと言うつもりはないんですけど、「生々世々」で人の生死から始まり、「深層」で神に問うということはきっと遥か昔を意識できる世界観になっているんだろうと思えますし。自分のことを綴った部分は置いといてね。アトランティス大陸かどうかはさておき、仮にそういう文明があったとしたら、きっと1万年とか2万年ぐらい前の出来事になるのかな。そこから「奈落」ができるんですよ。

──ということは、ここまでの流れはその後の曲に影響を及ぼしているわけですね。

Ruiza:そういうです。信じる信じないは置いといて、僕は遺跡とかが好きなんですけど、確認されている最も古いものは14000〜16000年前のものが多いんですよ。何となく常日頃からそういった分野に目を向けているから、歌詞を書くときにも自然に出てきちゃうんでしょうね。

──関心のある分野が、創作の過程で自分の人生観とシンクロしてくるんですね。

Ruiza:そうなんですよ。もちろん、アトランティスについても深掘りしましたし、都市が海に沈んでしまうような事態が起こったとしても、きっと人は同じことを繰り返すんだろうなと思う部分もある。それは今の世の中でもそうだと思いますしね。

──今、その背景を伺ったので、より立体的に楽曲を理解できましたが、それを知らずに聴いているだけでも浮かんでくる光景がありますよね。ここにあるのは何の死だろうと思いながら聴いていました。

Ruiza:まさに死なんですよね。ストーリーとしては、ここで希望を持って死んだ人が、次にどれぐらいの時間が経ったかはわからないですけど、魂になって蘇るというところが「Alma」なんですよね。

──「Alma」とはスペイン語で魂ということですね。

Ruiza:そうです。そして生まれ変わった先が「奈落」なんですよ。「奈落」は今……といっても、2025年という意味じゃなくて、文明が始まったとされる1万年前ぐらいの設定ですね。

──なるほど。そう聞くと「奈落」の歌い出し<最古の世界の果て>の記述もわかります。そういった長年の物語があるんですね。

Ruiza:それもきっと宇宙のどこかから来てるんですよね。ある日、地球がポッと生まれたとは思えないんですよ。

──どういうものかわからないけれども、何かしらの力が働いたであろうと。ここは現代科学をもってしても検証しきれないからこそ、今も多くの人を惹きつけるんでしょうね。しかも、後の人間社会の宗教観にもつながってくる。ある人はそれを神の仕業と言いますが、一方で、ある人は神などいないと言う。

Ruiza:ただ、僕はどちらでも構わないんですよ。歴史を遡ってみると、ある国がこの土地を治めていたとか、残された遺跡や資料などから推測できるものがありますよね。実際に映画などの題材になっていることも多いですけど、作品として脚色された部分はあるにせよ、ある程度は真実もあるんだろうなと思うんですね。そういったものにも面白さを感じるんですが、ここでは支配から逃れる曲を作りたいと思ったんです。

 「奈落」に関してはオリジナルのストーリーなんですけど、僕が考えたのは、何者かが宇宙のどこかからやってきたという設定があるんです。隕石が墜落したのかもしれないですし、超文明があったとして、タイムマシンで何かしらの生命体がやってきたのかもしれないし、人よりも優れた力を持った存在が支配する場所があると。そこから「Swallowed」で死んで、「Alma」で生き返った人が、その世界にいるという設定なんです。だから、気づいたら支配されていたということですね。パッと目が覚めたら「なんだこの世界は!?」といったイメージで。なので、「深層」に近いんですけど、途中で目覚めて、その支配から脱するんです。最初、つまり、一番底ということで「奈落」というタイトルにもしたんですね。

──こういったフィクションは、聴き手それぞれが、日常的な自分に置き換えて解釈できる面白さもありますよね。知らず知らずのうちに、気づいたときには何か支配されていた、そこから抜け出さない限りは新たな世界は開けない、とすれば、普遍的な話にもなり得るわけですし。

Ruiza:はい。だから、言ってしまえば、ここまで同じことを歌ってるんですよ。このアルバム自体がそんな感じではあるんですけどね、すべて生死に関わることですから。

──「奈落」に続くのは「魔儀」ですが、<魔儀>とは何なのかという話から伺う必要がありますね。こういう言葉はないと思いますので。

Ruiza:そう。魔法の儀式ということですね。そういう意味で、僕はライヴの曲だと思っているんです。元々は単純に激しい曲を作りたいなと思ってたんですよ。

──確かにファストでヘヴィな曲ですもんね。

Ruiza:はい。みんなで熱量高く、ワーッて盛り上がる曲が欲しいなって。ちょうど舜さんのスタジオにレコーディングに行くために電車に乗っているときだったんですけど、サビの部分がパッと浮かんできたんですよ。そこで「このメロディーを忘れたくない!」と思って、歌詞をすぐに考えたら、それもバーって書けちゃって。まさにそれはライヴの光景だったんですね。それをなぜ<魔儀>としたかと言えば、ライヴというのは、すごく魔法がかかる場所だなと感じているからなんですよ。目には見えない音というもので、あれだけ幸福になれて、一つになれる。そんな魔法とそれが生まれる儀式。何かそれを表すのに相応しい言葉はないかなと思って調べてはいたんですけど、まじないみたいな言葉もありだなと思ったので、まじないっぽい音とかも入ってます(笑)。ちょっとそういうリズムにもなってますし。「奈落」の次に来る位置ということで、古代の儀式を感じさせる要素を入れたいなとも思ったんですよね。

 「魔儀」を作ったことで、そうやって時代が進んでいることにも面白さを感じたんですよね。

──急に現代に飛んできたような印象もありますよね。

Ruiza:そう。でも、アトランティス大陸があって、さらにその前に古代がある。そこも相当な時間の経過があるんだけど、年代で考えると、「奈落」から「魔儀」ほうが短いんですよね。

──確かに言われてみればそうですね。最後の「With you」もこのストーリーの上にあるとはいえ、Ruizaさん自身の今の思いをそのまま吐露した曲ですよね。

Ruiza:そうです。このアルバムにはこういう幸福に包まれる曲が絶対に必要だなと思ったんですよね。逆に言うと「進みたい」と思ったというか……。

──わかります。余計な説明は不要ですよね。歌詞に綴られた文面通りに受け止めたいもので。それでいて、最後の<さぁ行こう 時を超え>などが、『Alive』のコンセプチュアルな流れに位置しているものであることも伝えてくる。それこそ太古の昔から今に命が継承されてきた、その中でこれからどうありたいのか、手を携えて進んでいきましょうと。

Ruiza:そうですね。もっと言えば、この次に生み出すものも期待しててよという気持ちも込めてるんですね。ここで終わりじゃなくて、この先があるよって。というのは、すでに初ライヴのときに、「黎明」はやってるんですね。

──8月9日にCDとしてリリースする楽曲ですね。

Ruiza:そう。『Alive』を完成させたときには、僕はもうその次の世界を見てたんですよ。歌詞とか細かいアレンジなどはもうちょっと先でしたけど、ずっと曲は作り続けてましたからね。

──<黎明>とは明け方、つまり始まりという意味ですよね。象徴的な曲名ですし、曲調的にも突き進んでいく様子が見て取れる。新たな幕開けが意識されていたわけですね。

Ruiza:はい。『Alive』を作ってみて、もっともっと広げていきたいなと思ったんですよ。音楽的にもそうですし、言葉の表現の仕方にしてもそう。まだまだ行けるという思いがあったんです。だから、次のステップというか、もう一段階段を上ったところですね。『Alive』があっての始まりだったから、次が本当のスタートみたいなイメージもあるんですよ。その意味では、『Alive』のときよりも確信めいているというか。

──『Alive』でようやく地上に出てきたわけですからね。

Ruiza:うん。そういう意味でも<黎明>という言葉を選んだわけですし、その先も考えたうえでのことですからね。

──<歩みは止めない>という歌詞の通りですね。<Shoot the moon>という一節もありますね。

Ruiza:これは不可能なことを成し遂げるという意味の熟語なんです。この曲を書いたときに、結局は自分自身だなと思ったんですよ。自分が頑張れば、結果はついてくる。単純な話ですけどね。殻を破るかどうかは、自分次第ですから。これも『Alive』を作って思うことではあったんですよ。

──<Don’t lose faith>に掛けて伺いますが、Ruizaさんの信念とは、ここで言うなれば、どういうものになるのでしょう?

Ruiza:僕は「好きなことやって欲しい」とすごく背中を押されたので、やりたいことを素直にやり続けたいなと思ってるんですよ。まぁ、始まったばかりなので、まだ何とも言えないところもありますし、これから生まれてくるもので、また少しずつ変わってくるとは思うんですけど、今はすごく心地がいいんですよね。きっと何年か経ったときに、改めて感じるんだろうなと思うんですけど、今またこんなに夢中になれるとは思ってなかったんですよ。

──そうですよね、始めるまでの経緯を考えると。

Ruiza:「あれがこうだから、こうしたほうがいいかな」とか、もう少しロジックを考えながら進めていくのかなと思ってたんですけど、そんなことはなくて、まさにバンド始めたときのような楽しさがあるんですよ。

──もう一方の「残響」もライヴで先行披露されていた楽曲ですね。

Ruiza:そうですね。今年4月の主催イベントで初披露しました。ライヴでお客さんが声をしっかり出してくれるんで、もっともっと声が大きくなって、会場全体に響いて欲しいなという思いもあったし、あとは単純に盛り上がる、ライヴで爆発できる曲を作りたいなって。バンド側と観客側が交互に歌詞を叫ぶような曲って、なかったんですよ。お客さんがいて成立するというか、一緒に作り上げる、そういうイメージです。

──<螺旋の中に刻まれた意志>という一節がありますよね。

Ruiza:これはDNAのことですね。

──DNAの二重螺旋構造を意味するものなんですね。

Ruiza:そう。「残響」も「黎明」もわりとDNAをイメージしているところがあるんですよ。二重螺旋構造って、イメージ的に何か上に登っていってる感じがあるじゃないですか。それを何か表現したいなと思ったので、「黎明」ではギター・ソロにバトンタッチするところで、シンセが6連譜でワーッて駆け上がっていく。「残響」にしても本来的に歌っているのは生と死なんですけど、もっと人間的な……『Alive』までは抽象的だったと思うんですけど、もう少し体内の話というか、心のありかというか、そういうところを今回は歌ってるんですね。

──より本能的な感覚を押し出してきている、と。

Ruiza:そうですね。この他にまだ音源化していない「追憶」という曲があるんですね。「追憶」と「黎明」は同じ世界観で繋がっていて。それも『Alive』を経て作ったものなので、生死を歌ってるのはもちろん、もう少し具体的に「死んだらどうなるんだろう?」みたいなこととかを考えてたんですよ。死んだ先によく「空に昇る」と言いますけど、それを歌ってるんです。もっと言えば、「生々世々」からも繋がっているし、「追憶」の世界から蘇る、新たに始まるのが「黎明」なんですね。今、他にもいろんな曲を生み出しているところなんですけど、すべてが一つになりそうだなと思ってて。

──『Alive』で示されていた世界観は、より色合いが強くなっていきそうですね。生と死の話は突き詰めれば突き詰めるほど、終わりがない。輪廻転生を認めるか、認めないかという話だけでも、方向性が変わってくる。

Ruiza:それもありますね。バンドがストップして、死んではいないですけど、心にすごく大きな穴が開いて、虚無な日々を過ごすことになった。そういった経験もそこにはあるんですよ。

──つまり、肉体的な死ではなく、精神的な死を味わったような感覚ですか。

Ruiza:うん。本当に何もないのに涙が出たりすることもあって……。でも、今はめっちゃ楽しいんですよね。ということは、完全に生き返ったということだと思うんですよ。それって、天と地ほどの差があるじゃないですか。その意味でもテーマにしやすいところはありますね。自分が感じたことですし……そういうことなのかなと思ってます。

──これから出てくるものが、また楽しみになりますね。

Ruiza:うん。大作を作りたいですね。頑張ってアルバムとか作りたいですね。

──生と死というテーマも際限ないものですから、それはそれで追究しがいがあるでしょうね。

Ruiza:とはいえ、世界観も今は意識するんですけど、歌詞はいつも最後に書くんですよ。それよりも、まずは自分が好きな曲を作れるかどうかなんです。そのうえで、今は「本当に好きだから」というめちゃくちゃピュアな気持ちで曲がすべて作れている。これまでなかった感覚なんですよ。もちろん、今まで作ってきたものは全部好きなんです。でも、こういった感覚をちょっと面白く感じてるんですよ(笑)。アイディアが浮かんだとしても、使わないものもあるんですけど、今はほとんどの確率で、一発で「これだ!」っていうものができるようになっていて、基本の形を作るのにあまり迷いがないんですね。

──いい流れが来ているんですね。イヴェントへの出演を含めて、8月から少なくとも来年の春までライヴが目白押しですが、Ruiza BANDのようなソロ・バンドの形態で、ここまでの本数の公演が行われる珍しいケースだと思うんです。これもRuiza BANDの状態が良好である証だと思うんですね。

Ruiza:はい。だから、めっちゃ観て欲しいですね。なるべくいろんなところに行きたいなと思っていて。今、行きたいんですよ。「来年にしよう」なんて思ってたら、いろんなことを考えて、結局は行けなくなる可能性も出てきますからね。バンドの状態もまた変わってくるし、サポート・メンバーのスケジュールもどうなるかわからないですし。だから、ライヴに関しても、自分がやりたいなと思ったことをそのまますぐに形にしてるんです。やりたい事を素直に実行に移せていて、ものすごく充実してますね。ぜひ今のRuiza BANDのライブを見て一緒に楽しんでもらいたいですね!